
KPIを管理しているのに、何を改善したら良いか分からない——そんな状態が、このサイトを運営し始めたころの私でした。
PV、セッション数、検索クリック数。数字は見ていました。でも、どこから手をつければいいか分からない。「全部大事そう」で止まってしまう。
その状態を抜け出すきっかけになったのが、KPIツリーという考え方です。数字が足りないのではなく、数字同士の関係が見えていないことが問題だったと気づいたとき、見るべき数字とその順番が変わりました。
同じ感覚を持っている方に向けて、この記事ではKPIツリーの考え方を解説します。
KPIツリーとは、目的から数字を分解する考え方
KPIツリーとは、最終的な目的から必要な数字を分解していく整理方法です。どの数字が、どの成果につながっているか、を図にしたものです。
上から下へ、「目的 → 成果指標 → 要因 → 行動に近い指標」という順番で整理します。大事なのは指標をたくさん置くことではなく、数字同士の関係を見えるようにすることです。
最終的な目的と日々見る数字がつながっていないと、改善すべきポイントが分かりにくくなります。
たとえば「問い合わせ数を増やしたい」という目的があるとします。問い合わせ数だけを眺めていても、「訪問が少ないのか」「CTA(行動を促すボタン)を誰もクリックしていないのか」「フォームで離脱しているのか」は分かりません。訪問数、問い合わせ率、CTAクリック率、フォーム完了率…このように分解して初めて、見るべき数字が変わります。
私自身、このサイトを運営するまで、KPIツリーという考え方を知りませんでした。KPIという言葉は知っていましたし、データ分析の場面でも使っていました。しかし、数字同士がどうつながっているかは意識できていなかったです。
このサイトの目標PVに向けて、セッション数や検索クリック数なども一緒に見ていた時に、KPIツリーの考え方を教わりました。数字をただ横並びで見ていると「どれも大事そう」で止まります。でも、それぞれの指標の間に関係性があることを整理してもらったとき、「この指標が足りないなら、関連するどの数字を改善すればいいか」が初めて見えてきました。
KPIツリーは数字を増やすためではなく、数字の関係を見えるようにするために使う考え方です。
KPIを一覧で見るだけでは、改善点が見えにくい
KPI管理として、数字を表にまとめているケースは多いと思います。それ自体は悪くありません。ただ、一覧表には限界があります。
たとえば、このような表を見ているとします。
指標 | 数値 |
|---|---|
PV | 10,000 |
クリック数 | 300 |
CTR(クリック率) | 3% |
問い合わせ数 | 5 |
CVR(コンバージョン率) | 0.05% |
数字は見えます。でも、問い合わせ数を増やすために「PVを増やすべきなのか」「CTRを上げるべきなのか」「問い合わせ導線を直すべきなのか」は、この表だけでは判断しにくいです。
NTTドコモビジネスのKPI管理の解説でも、「KPIは期末などに振り返る最終目標ではなく、最終目標を達成するためのプロセス(中間目標)を指します」と説明されています。つまりKPIは、最終成果に至るまでの途中の数字です。
(参考:デジタルガバナンス・コード3.0|経済産業省、KPI管理とは?|NTTドコモビジネス)
途中の数字を一覧で並べて眺めているだけでは、どこに手を打てばいいかが見えてきません。どの数字が最終成果に近いのか、どの数字が手前の要因なのかが分からないと、何から手をつければいいか分からなくなります。
KPIは一覧ではなく、関係性で整理する必要があります。では、どのように整理すればいいのか、KPIツリーの具体的な考え方を3つのステップで説明します。
KPIツリーでは「目的 → 分解 → 動かせる指標」の順で考える
KPIツリーの考え方は、3つのステップで整理できます。KPI設計の基本となる順番です。
① まず最終的な目的を決める
最初にやるべきことは、「何を達成したいのか」を先に決めることです。
売上を増やす
問い合わせ数を増やす
資料請求数を増やす
継続率を上げる
ここでの注意点は、最初から細かい指標を並べないことです。先に目的がないと、指標だけが増えていきます。KPI作り方の基本として、「目的が先、指標は後」の順番は変わりません。
参考:非機能要求記述ガイド|IPA、健康経営ガイドブック|経済産業省
私の場合は、この最終的な目的は「目標のPV数に到達する」ことでした。
② 目的につながる数字に分解する
目的が決まったら、それを構成する数字へ分解します。これが指標分解のステップです。
「問い合わせ数を増やす」という目的であれば、次のように分解できます。
問い合わせ数 = 訪問数 × 問い合わせ率
訪問数 = 検索流入 + SNS流入 + 直接流入
問い合わせ率 = CTAクリック率 × フォーム完了率
このように分解すると、問い合わせ数が少ない原因をどこに探せばよいかが見えてきます。
大事なのは、目的に対して「論理的につながっているか」を基準に数字を選ぶことです。思いついた指標をただ並べるのとは、根本的に違います。
私は以下の画像のような分解を教えてもらいました。

③ 現場で動かせる指標まで落とす
最後に、実際に改善できる数字まで落とします。ここをすることで、「何を直せばいいか」が具体的になります。
たとえば、以下です。
検索流入を増やしたい → 表示回数・検索順位・CTRを見る
CTAクリック率を上げたい → CTAの文言・位置・クリック率を見る
フォーム完了率を上げたい → 入力項目数・離脱率を見る
ここまで落とすと、ようやく「何を改善するか」が具体的に見えてきます。問い合わせ数が少ない場合でも原因は、流入不足かもしれませんし、CTAのクリック率かもしれませんし、フォーム離脱かもしれません。分解して初めて、見るべき数字が決まります。
私は、先ほどの分解から、更に以下の画像の青い囲いのような指標まで落としました。

KPIツリーの具体例:メディアサイトで問い合わせ数を増やしたい場合
実際にどう分解するか、サイトの例で見てみましょう。
以下は、このサイトの運営で実際に意識している指標をもとにした例です。目標とするPVへ向けて、どの数字がどこにつながっているかを整理したときのイメージに近い形で示します。
目的:問い合わせ数を増やす

一覧で見ているだけだと、「PVが少ない」「CTRが低い」「問い合わせが少ない」で止まります。
しかしKPIツリーにすると、見方が変わります。
表示回数はあるのにCTRが低い → タイトルやディスクリプションを見直す
記事への流入はあるのにCTAクリックが少ない → 記事内の導線を見直す
フォーム到達はあるのに完了が少ない → フォームの入力項目や不安要素を見直す
これはメディアサイトに限った話ではありません。「売上 = 訪問件数 × 平均販売単価 × 成約率」のように、最終成果を構成する数字に分解することがKPIツリーの本質です。
(参考:KPI管理とは?|NTTドコモビジネス)
この分解があることで、「訪問件数が足りないのか」「単価が低いのか」「成約率に問題があるのか」と、改善の打ち手が具体的になります。
KPIツリーは、数字を見るためではなく、改善の打ち手を考えるために使う考え方です。ただし、KPIツリーも作り方を間違えると「数字を並べただけ」に戻ってしまいます。最後に、よくある失敗を3つ確認しておきましょう。
KPIツリーを作るときの注意点3つ
最後に、KPI管理の現場でやりがちな失敗を回避するポイントを3つ挙げます。
① 指標を増やしすぎない
KPIツリーは、指標をたくさん置くほど良いわけではありません。見ても判断に使わない数字まで入れると、結局また「数字を並べただけ」になります。
② 目的とのつながりが弱い指標を入れない
見やすい数字、取りやすい数字だけを入れると、目的からズレます。「この数字が変わると、最終成果にどう影響するのか」を常に問いながら選ぶ必要があります。問い合わせ数を増やしたいのに、関係の薄いSNSのいいね数ばかり見ていても、指標改善にはつながりません。
(参考:健康経営ガイドブック|経済産業省)
③ 現場で動かせる粒度まで落とす
「売上」「問い合わせ数」「CV数」だけでは、まだ大きすぎます。実際に改善できる行動に近い数字まで落とさないと、KPIツリーを作っても「で、何をすればいいの?」で終わってしまいます。
まとめ
KPIは、並べるだけでは改善に使えません。大事なのは、最終的な目的から逆算して「どの数字がどの成果につながるか」を整理することです。
KPIツリーはそのための考え方です。目的を決め、数字を分解し、現場で動かせる指標まで落とし込む。この順番で設計することで、数字が「改善の打ち手を考えるもの」に変わります。
まずは手元のKPIを1つ取り出して、「この数字は何の成果につながっているか」を書き出してみるところから始めてみてください。
著者
名前:minoRi
Tableau Certified Data Analyst(2025年4月取得)。
事業会社でのデータ分析実務を経験。自身もKPIツリーという考え方を知らない状態から学び、数字の見方が変わった経験をもとに本記事を執筆。AI・データ領域に興味を持つ方に向けて、実務で使える考え方を発信しています。