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利用者に合わせてダッシュボードを分ける ...

利用者に合わせてダッシュボードを分ける ― 経営・営業・現場

利用者にとって分かりやすいダッシュボードを作ることができると、共通認識を持つことができ、意思決定の質を向上させられます。

CEOや営業マネージャー、現場主任が集まる会議でダッシュボードを見るとき、こんなことありませんか?

CEOは「今期、結局いいの?悪いの?」と全体の状態を知ろうとします。営業マネージャーは「今期の未達の原因はどのエリア?誰の案件?次に何を詰める?」と打ち手を決めるつもりです。現場主任は「直近どこが詰まってる?遅延やトラブルが増えてない?」を即座に確認したがっています。

しかし、ダッシュボード画面1枚に全部の情報が入っており、皆がフィルタを触り始めた瞬間に会話が散り、最後は「後でExcelで確認する」で終わってしまいます。

原因は、ダッシュボードの出来栄えではなく、「誰が」「何を理解して」「どんな判断・行動につなげるか」が混ざっていること。 この問題は「フィルタをそれぞれ操作し始めたこと」ではなく、利用者ごとに目的・必要な粒度・必要な手がかりが違うのに、1枚に情報を混ぜてしまうことです。

つまり、ダッシュボードを設計する際には「誰に何を伝えるか」「どんな手がかりが必要か」「どれくらいの頻度で確認が必要か」などを考えることが重要です。

本記事では、経営・営業・現場の3パターンを例に分け方を考えますが、内容は他の部署などでも応用可能になっています。


利用者に合わせてダッシュボードを分ける

ダッシュボードには、伝えたい情報を載せる必要がありますが、情報をただ盛り込めば良いわけではありません。

では、どうやって情報を分けたら良いのでしょうか?

ダッシュボードを分ける時に考えること

ダッシュボードを分ける際に考えるのは「利用者がどんな人か」です。

以下に、どうやって利用者を分けるかの線引きポイントをまとめました。

【ダッシュボードを分けるポイント】

  1. 役割と目的:何を理解させたいか/何につなげたいか(判断・行動)

  2. 必要な粒度:KPI/サマリー/明細などのうちどれか

  3. 必要な手がかりと操作許容度:どんな説明や注釈が要るか/指標の定義やダッシュボード操作を熟知しているか

  4. 利用頻度と時間軸:毎日/週次/月次、見たい変化のスピード

  5. 権限・守秘:見せてよい範囲が違うかどうか

この5つの観点から考えて、ダッシュボードを見せたい人たちが分かれるのであれば、ダッシュボードも分けましょう。

なぜ分けないといけないのか

ダッシュボードを利用者に合わせて作るのは、実際大変です。しかし、なぜそれでも分けなければいけないのか、分けないとどういったことが起こるのか、について例を用いて説明します。

例)

【粒度が混在している場合】

KPI(全体の結論)と明細(個別の対象)が同じ画面にあり、その場で結論が出ない

  • 経営目線:KPIはあるのに、全社の「結論」と「どこが異常か」が一目で掴めない。画面の下に明細が並んでいて目線が散り、最初の発言が「で、何が言いたいの?」となってしまう。

    →結果、ダッシュボードでは意思決定に入れず、担当者の口頭まとめ待ちになります。

  • 営業目線:数字は見えるが、原因を追うための「切り口の順番」(例:エリア→商品→担当)が画面上で整理されていない。深掘りしようと明細やフィルタに入った瞬間、切り口が増えていき「結局どこを詰める?」が決まらなくなってしまう。

    →結果、会議が探索で終わり、次アクションが確定しません。

  • 現場目線:明細はあるが、量が多く「今日対応すべき例外(未処理・遅延など)」が上に出てこない。探すだけで時間が溶けて「いつもの一覧(Excel/システム)で見た方が早い」になってしまう。

    →結果、現場はダッシュボードを見なくなり、運用が形骸化します。

【手がかり不足/過多の場合】

初心者には説明が足りず、熟練者には冗長で遅い

※ここでいう「初心者」は、業務経験ではなく「この指標の定義やダッシュボード操作に慣れているか」の意味です。

  • 経営目線:指標名は並んでいるのに「それが何を意味するか(定義・単位・対象期間)」が画面内で分からず、最初の確認が「この数字、何を含んでいるの?」から始まってしまう。

    →結果、意思決定の会話に入れず、画面を閉じて口頭説明待ちになります。

  • 営業目線:重要指標はあるのに「どこが問題か」を示す手がかり(目標差・前年差・ワースト強調・優先度)が弱く、探し始めてしまう。

    一方で注釈や注意書きが画面のあちこちに散っていて読み切れず、結局「これ、どこから見ればいい?」となります。

    →会議では読み方の説明が必要になり、画面単体で進まない。

  • 現場目線:注釈・定義・補足が多く、さらにフィルタや選択肢も多いせいで、必要な例外(今日対応すべき対象)が一瞬で見つからなくなってしまう。

    →最終的に「読む時間がない。まず対応したい」となり、いつもの一覧に戻ります。

【ビューに情報を盛りすぎた場合】

結果的に情報過多になり、明瞭さを失う

  • 経営目線

    画面にグラフが6〜10個並んでいて、最初の3秒で「結論」が見つからない。

    目線があちこちに飛び、結局「結局どれが重要?」となってしまう。

    →会議では、ダッシュボードではなく担当者の口頭まとめが主役になります。

  • 営業目線

    売上・利益・件数・目標差・前年差・商品別・エリア別…と全部載っていて、どこから見ても「一部の事実」しか拾えない。

    みんなが別のビューを根拠に話し始め、会話が「Aが原因だ」「いやBだ」と散ってしまう。

    →打ち手(次に詰める対象)が決まらず、会議が長引きます。

  • 現場目線

    今日の例外を探したいのに、関連しないグラフが多く、必要な情報が埋もれる。

    スクロールやクリックが増えて、欲しいものに辿り着く前に「時間がかかるから見ない」になってしまう。

    →結果、現場はいつもの一覧や別資料に戻ります。

以上のような場面になることを避けるために、利用者でダッシュボードを分けましょう。

次は、具体的に利用者を分ける際の判断基準について紹介します。


利用者で分ける/分けないの判断基準

ここからは、先ほど紹介した「ダッシュボードを分けるポイント」の具体的な基準について、紹介します。

① 役割と目的

ダッシュボードを見る理由が違うのか、同じなのかをまずは考えます。

分けるべき基準:

例えば下記のように、ダッシュボード画面でやりたいことが違うなら分けます。

経営=「全体の目標に対する達成状態を判断したい」

営業=「どこを優先して詰めるか決めたい」

現場=「今日の例外(配送遅延など)を見つけて対処したい」

同じ画面でもよい基準:

3者とも「同じ判断」をしたい(例:全社KPIの確認だけ)場合。

② 必要な粒度

ここでいう「粒度」は、どれくらい細かいデータまで見るかです。

例えば、経営は「今期どうなのか?」の答えが欲しいです。ここに明細が並んでいると、視線も議論も明細に向いてしまいます。営業・現場はその逆で、数値の結論だけだと次にどんな行動が必要かが決まりません。

KPI/サマリー:全体の結論を見る

明細:個別の対象(案件/注文/顧客など)を特定する

分けるべき基準

経営はKPI/サマリーで十分だが、現場は明細が必要、のように必要な粒度が違うとき。(参考:Tableau 視覚的なベスト プラクティス オーディエンス

同じ画面でもよい基準

目的が「概況の共有」だけで、明細で特定して対処するところまで求めないとき。

③ 必要な手がかりと操作許容度

「必要な手がかり」は、ダッシュボードを読むために必要な定義などの情報のことです。

「操作許容度」とは、ダッシュボードを見る際に操作に有することができる量です。

これらが違うのに同じダッシュボードにまとめると、見る人に負荷がかかります。

分けるべき基準(手がかり)

必要な事前の説明量が違うなら分けます。

ある利用者は「定義・単位・対象期間・良い/悪いの基準(目標差/前年差)」がないと読めないという場合に、別の利用者は、それらが多いと邪魔で、結論だけ最短で見たいということがあります。

※「手がかり」はツールヒント等で補う、という逃がし方もあります。

分けるべき基準(操作許容度)

クリックなしで読める(操作ほぼ0が前提)例:経営

数回のクリックで深掘りしたい(操作OK)例:営業

触ってる暇がない(操作最小)例:現場

許容できる操作量が違うなら分けます。

④ 利用頻度と時間軸

利用者によってダッシュボードを利用する頻度は違います。現場では朝礼の度に確認したい、リアルタイムで見たい、という声があると思いますが、経営者は同じ頻度での報告を求めていない場合があります。

分けるべき基準

毎日見る:迷わない固定されたUI(見る場所が毎回同じ)

月1で見る:探索できるUI(切り口を変えて原因を探せる)

→見る頻度が違うなら分けます。

設計としての目安:

経営…年/四半期

営業…月/週

現場…日/リアルタイム

⑤ 権限・守秘

顧客情報や営業部の個人成績のような内容は、社内の人であれば誰にでも見せて良いわけではありません。

分けるべき基準

  • 粗利・人事・個人情報など、人によって見せて良い範囲が違うなら分けます。

※ここは設計論ではなく、運用上の制約なので例外なく強い基準です。

迷ったときの最終ルール

  • 1枚に入れるビューが4つを超えるなら、分ける候補とする(情報過多で明瞭さを失いやすい)

  • 「全部入り」にしたくなったら、それはだいたい利用者が混ざっているサインです。

  • 誰が(利用者となる人)、何を判断/行動するために、どの頻度で見るか」この1文中の内容が経営・営業・現場などでズレるなら、基本は分けましょう。

実務へ落とし込む際の動き

ここからは、実際に仕事でこの分ける基準を使ってダッシュボードを作ための手順です。

やることはシンプルで、大まかな流れは以下のようになります。

①利用者カードを作る

②1画面内で答える質問を決める

③2〜3ビューに収める

④公開後に削る

今回は、「四半期に1回の経営・営業・現場担当者が同席する会議」を例に考えていきます。

Step0:対象を1つに絞る

まず「このダッシュボードを使う場面」を想像します。

例:四半期に1回の経営・営業・現場が同席する会議

Step1:利用者カードを作る

Notionやメモなどに、まずは以下のテンプレートを埋めます。利用者カードはまず、出席する代表者数分を作ってみてください。代表者の中でも、内容が変わる部分が出そうであれば、カードを増やして書いてください。

利用者カード

  • 利用者:経営/営業/現場担当者など

  • この画面で決めたいこと(1文):

  • 見る頻度:毎日/週次/月次など

  • 必要な粒度:KPI/サマリー/明細

  • 必要な手がかり:定義(単位・期間・含む/除く)/目標差・前年差/ワースト強調など

  • 操作許容度:クリック0回/数回OK/操作ほぼ無理

  • 見せてはいけないもの(権限・守秘):

  • この画面に入れないもの(NG):

利用者カードの例

ポイント:

「決めたいこと(1文)/必要な粒度/必要な手がかり/操作許容度/権限」のどれかがズレるなら、基本は分けます。

Step2:各カードから「1画面内で答える質問」を1つだけ選ぶ

利用者カードの「決めたいこと(1文)」を、そのまま画面の問いにします。

例)

  • 経営:今期は良い?悪い?異常はどこ?

  • 営業:どこを優先して詰める?(エリア/商品/担当のどれが原因?)

  • 現場:直近で増えている例外はどれ?(遅延/返品/赤字)

ポイント

「1画面内で答える質問」が定まると、ビューを増やす誘惑が減ります。

Step3:2〜3ビューの最小セットを作る

いきなり作り込むのではなく、先に「2〜3ビューの設計図」を書きます。(参考:Tableau 効果的なダッシュボードのベスト プラクティス ビューの数を制限する

ビューごとに、何が分かるかを1行で添えます。

例)

経営:

  1. KPIカード:今月の状態が一言で分かる

  2. 推移:良い/悪いが「いつから」か分かる

  3. 異常トップ:どこを優先して見るべきか分かる

営業:

  1. 全体→内訳:未達がどこか分かる

  2. 原因候補:優先的に詰める対象が分かる

  3. 深掘り:担当/案件に落とす入口

現場:

  1. 例外一覧(件数・割合):今日の対応が分かる

  2. どこで起きてるか:場所/工程/カテゴリが分かる

  3. 対象リスト(最小限):すぐ処理できる対象が分かる

ポイント

上記の例のように、各利用者で「ビュー名→分かること」が1行で説明してみてください。

Step4:セルフレビュー

公開前に以下の観点でチェックをします。

削るチェック(上から順に強い)

  1. 3秒テスト:Step2の「1画面内で答える質問」に3秒で答えられない要素は削る

  2. 操作回数テスト

    例)

  • 経営:操作0回で答えが出るか

  • 営業:数回のクリックで原因候補まで行けるか

  • 現場:操作しなくても例外が見つかるか

ポイント:

この画面で決めない情報は削る:入れるなら別ダッシュボードに逃がす

Step5:公開後に改善する

聞き方を固定して会議終わりに質問すれば、今後も使われるダッシュボードに進化します。

各利用者に聞く質問

  • この画面を開いた瞬間に、「1画面内で答える質問」に答えられたか?(Yes/No)

  • 迷った/止まったのはどこ?(指標名、定義、比較、操作など)

  • いらないと思ったものはどれ?(ビュー単位で)

「分け方の正解」を探すより、上記の手順で作ってみると、最短で使われる形に近づきます。

ポイント:

フィードバックをもらう時には、利用者ごとに「別々に」評価をお願いする

具体例

例として作った利用者シートで分けた内容で、目的・粒度・手がかりを変えた3枚を作ってみました。

使用したデータは、Tableauから出ているサンプルデータの「スーパーストアの売上高」です。

経営

KPIの確認と異常と思う部分へ注目できるようにまとめました。操作はほぼ0にしています。

経営向けダッシュボードの画面

営業

売上の内訳から、売り上げに対して利益の低い原因の候補となりそうな部分を特定し、次の施策を打つための明細を出せるようにしました。カーソルを合わせると、詳細な数字を見ることができ、クリックでフィルターがかかります。

営業向けダッシュボードのGIF

現場

例外(配送日がしきい値超、返品、赤字)の特定や監視ができるようにしました。直近日数や配送遅延と判断されるしきい値を調整でき、地域×配送クラスでクリックすると、フィルターもかかります。

現場向けダッシュボードのGIF

まとめ

ダッシュボードを利用者別に分けるべきか迷ったら、部署名ではなく「利用者(役割・知識・必要な手がかり)と目的(誰に何を伝え、どんな判断・行動につなげたいか)」で判断します。

優れた視覚化は明確な目的を持ち、意図した利用者に働きかけるべきであり、設計前に「対象者は初心者か/熟知しているか」「どんな手がかりが必要か」を考えることが推奨されています。

具体的には、①役割と目的、②必要な粒度(例:エグゼクティブには行レベルではなく集計KPI)、③必要な手がかりと操作許容度、④利用頻度と時間軸、⑤権限・守秘という5点がズレるなら、1枚にまとめず分けた方が運用されやすいです。

ビューを詰め込み過ぎると全体像と明瞭さが失われるため、2〜3ビューに収まらないならダッシュボードを増やす、というTableau公式の考え方とも整合します。

そして、ダッシュボードの目的が「共通認識を作り、意思決定の質を上げ、行動につなげること」だと考えると、同じデータでも同じ見え方を目指すのではなく、各利用者が必要な粒度と手がかりで迷わず判断できる見え方を用意するのが合理的です。

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minoRi

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