
Excelで作った表を、ピボットテーブルやBIツール、グラフ作成に使おうとしたとき、「うまく集計できない」「思った通りに並べ替えられない」と感じることがあります。
その原因は、表の作り方そのものにあるかもしれません。
Excelの表は、人が見る資料としては分かりやすくても、分析に使うデータとしては扱いづらい形になっていることがあります。
そこで確認したいのが、表が「整然データ」に近い形になっているかどうかです。整然データとは、分析や集計に使いやすいように、変数を列、観測を行、値をセルにそろえた表形式のデータです。
整然データの基本的な考え方は、別記事「機械で読めるExcelにするには:分析用データの整え方『整然データ』」で詳しくまとめています。
この記事では、整然データの考え方をもとに、Excel表を「列・行・セル」の3か所から確認していきます。
Excel表は「見た目」ではなく「データの持ち方」で見る
ここからは、Excel表が分析に使いやすい形になっているかを、「データの持ち方」から確認していきます。
見るポイントは、どの情報が列に入っているか、1行が何を表しているか、1つのセルに何が入っているかです。
Tableau公式ヘルプでも、分析用データは、集計済みではなくできるだけ細かい粒度で、データベース表のように整理され、関係のない情報を除いた形にすることがすすめられています。(参考:Tableau ヘルプ データ操作のヒント)
分析に使いやすい表の「データの持ち方」
では、どこを見れば「データの持ち方」を確認できるのか。そのときに確認したいのが、次の3つです。
列:1列に複数の意味が混ざっていないか
行・表:1行や1表の単位が途中で変わっていないか
セル:1セルに複数の値が入っていないか
この3つは、整然データの考え方ともつながっています。整然データでは、何を測ったかは列に、1件ごとのデータは行に、1つひとつの値はセルに入れる、という考え方が示されています。(参考:Journal of Statistical Software, Tidy data、Colorless Green Ideas 整然データとは何か)
チェック1|1列に複数の意味が混ざっていないか
まず確認したいのは、列の使い方です。
整然データでは、1つの列に1つの意味だけを入れます。「売上」の列には売上金額、「日付」の列には日付、「地域」の列には地域名が入っているような形です。
反対に、列名の中に複数の意味が混ざっている表は整然データの形式になっていません。
例えば、次のような列には注意が必要です。
「2026年4月売上」→ 年月 + 売上が混ざっている
「東京売上」→ 地域 + 売上が混ざっている
「商品A_数量」→ 商品名 + 数量が混ざっている
このような形でも、人間が見るだけなら意味は分かります。
しかし、後から「年月ごとに集計したい」「地域ごとに比較したい」「商品別に数量を集計したい」と思ったときに、絞り込んだり、並び替えたりしにくくなります。
月別の数字が横に並んでいる表は注意
例えば、次のように月ごとの売上が横に並んでいる表があります。
商品 | 2026年4月売上 | 2026年5月売上 | 2026年6月売上 |
|---|---|---|---|
A商品 | 100000 | 120000 | 90000 |
この表は、人が見るだけなら分かりやすいです。しかし、分析に使う場合は少し扱いづらくなります。理由は、「2026年4月」「2026年5月」…という年月の情報が、列名の一部になっているからです。
このままだと、年月で並べ替えたり、期間で絞り込んだりがしにくいです。分析に使うなら、次のように「年月」と「売上」を分けた形にしましょう。
商品 | 年月 | 売上 |
|---|---|---|
A商品 | 2026年4月 | 100000 |
A商品 | 2026年5月 | 120000 |
A商品 | 2026年6月 | 90000 |
MicrosoftのExcel向けガイドラインでも、データを整理するときは、同じ種類の情報を同じ列に入れることがすすめられています。例えば、売上は売上の列、日付は日付の列、商品は商品の列にそろえる、という考え方です。(参考:Microsoft サポート ワークシート上のデータを整理および書式設定するためのガイドライン)
そのため、Excel表を見るときは、まず列名に注目します。
列名の中に、年月・地域・商品名・区分などの情報が入っている場合は、その情報を別の列として分けた方が良い可能性があります。
表の形が整ったあとに、その内容を表のまま見せるかグラフにするかで迷う場面もあると思います。こちらの記事で表とグラフの使い分けについてまとめています。
チェック2|1行や1表の単位が途中で変わっていないか
次に確認したいのは、行と表全体の単位です。
Excel表を見るときは、「この表の1行は何を表しているのか」を確認します。例えば、1行が「1件の注文」を表しているのか、「1商品」を表しているのか、「1日分の売上」を表しているのかによって、表の意味は変わります。
整然データでは、1行の単位がそろっていることが大切です。
明細・小計・合計が混ざっていないかを見る
次のようになっている表は注意が必要です。
明細行の途中に小計行が入っている → 1行の意味が、明細と集計で混ざる
直し方:元データから小計・合計行を外し、ピボットテーブルやBIツール側で集計するある行は注文単位、別の行は商品単位になっている → 何を1件として数えるかがぶれる
直し方:1行の単位を「注文」か「注文×商品」などにそろえる表の上部は売上明細、下部は担当者別集計になっている → 1つの表に別の種類の表が混ざっている
直し方:明細データと集計表を別の表として分ける
特に、合計行や小計行は、Excelではよく入れたくなります。しかし、分析用データの中に合計などが混ざっていると、集計時に二重計上の原因になり得ます。
次の表は、明細と集計が同じ場所に混ざっています。

分析用データでは、合計は元データに入れず、分析時に計算する方が使いやすくなります。
Tableau公式ヘルプでも、小計や総計のような事前集計データは、必要に応じて元データから外し、分析側で計算する考え方が示されています。(参考:Tableau ヘルプ データ操作のヒント)
また、整然データの説明では、「1件の記録を1行にすること」と、「何を記録する表なのかを1つにそろえること」が条件として示されています。
ここでは、次の3つを見ます。
この1行は何を表しているのか
この表は、1種類のデータだけでできているか
明細・小計・合計・メモが同じ表の中に混ざっていないか
この3つを確認するだけでも、分析前に直した方が良い表かどうかを判断しやすくなります。
チェック3|1セルに複数の値が入っていないか
最後に確認したいのは、セルの中身です。
整然データでは、1つのセルには1つの値だけを入れます。そのため、次のように書かれているセルがないかチェックしてみてください。
「10個・5,000円」→ 数量 + 金額が混ざっている
「北海道札幌市中央区」→ 都道府県と市区町村などの住所情報が混ざっている
「2026/4/1 メモあり」→ 日付とメモが混ざっている
住所や名前のような情報は、必ず細かく分ける必要があるわけではありません。都道府県別に集計したい、姓だけで並べ替えたいなど、後から条件として使う場合にだけ、必要な単位で列を分けます。
集計に使う情報は、最初から分けておく
例えば、「10個・5,000円」と1セルに入っていると、数量だけを合計したり、金額だけを集計したりしにくくなります。
この場合は、「数量」と「金額」を別々の列に分けた方が分析がしやすくなります。
数量 | 金額 |
|---|---|
10 | 5000 |
Excelにはセル内の情報を分ける方法もありますが、1セルに複数の情報が入っている場合は、最初から分けて入力しておく方が、使いやすい場面が多いです。
これは整然データの考え方でいう「1つの値は1つのセルに入れる」というルールにも当たります。
そのため、Excel表を見るときは、セルの中に複数の情報がまとまって入っていないかを確認します。1セルに複数の値が入っていると、人間には読めても、後から分析するときに扱いづらくなります。
数量と金額のように種類が違う情報は列を分けましょう。A商品/B商品のように複数の商品が1セルに入っている場合は、商品ごとに行を分けると分析時に使いやすくなります。
まとめ
Excel表を分析に使うときは、「列・行・セル」の持ち方を確認します。
1列に複数の意味が混ざっていないか
1行や1表の単位が途中で変わっていないか
1セルに複数の値が入っていないか
この3点を見るだけでも、分析前に直しておきたい表のクセに気づきやすくなります。
列名に年月や地域が入っている場合:それを列名の一部にしたままにせず、「年月」「地域」のような列として分けられないかを考える
合計行や小計行が混ざっている場合:元データには明細だけを残し、合計はピボットテーブルやBIツール側で計算する方が扱いやすくなる
1セルに複数の情報が入っている場合:後から集計・並べ替え・抽出に使いたい単位で列を分ける
迷ったときはこのように、Excel表が分析に使いやすい形になっているかを確認してみてください。